雨が降り続いていた。
最初の日は珍しさに喜んで外ではしゃぎ回っていたこいつらも、今日はおとなしい。
サクヤはいい。
元々、本さえ読んでればしあわせそうにしてる。
雨の中で蛙とりをしてたのは、実はルフィにつきあってやってたんだよな。
ま、水溜りに飛び込むのは本気で楽しんだみたいだけどな。
髪の毛を拭いてやったら、タオルがずっしり重くなった。
問題は、ルフィだ。
たまには勉強でもしてみろよ、と言ったら本を広げて30秒後に寝やがった。
今も大口あけてグースカやってる。
お前なぁ。
一応、俺たちはそこら辺のガキどもにちょっと差をつけて早めに大人になんなきゃいけないことになってるんだぜ。
夕飯はシチューにした。
時間が余ってるからちょうどいい。
マキノがくれた野菜もそろそろ使っちまわないとだめだしな。
静かだな。
雨音だけが聞こえる。
…って、ちょっと静か過ぎやしねぇか?
見たらやっぱり、サクヤの手から本が床に落ちていた。
ルフィと2人、ソファでくっついて眠ってやがる。
ちょっと冷えてきたし、風邪ひくぞ。
毛布をかけてやったら、ルフィが寝ぼけて笑った。
あったかそうだな、お前ら。
「今日はシチューかぁ~♪」
はしゃぎ声に飛び起きると、シャンクスがいた。いつからだ?
「おいおい、旨そうだな~!もう食えるのか、これ?エース」
「こら、もうちょっと待て。…そうだな、あと10分だ」
「10分か~」
残念そうに椅子に座り込む赤毛の男。指でもくわえそうだ。ったく、こいつは大人版ルフィか。
で、こいつはどこから、いつ戻ってきたんだろう。
雨なのに麦わら帽子をかぶって、顔中笑顔でいっぱいにして。
「この2人が起きたらな、ちょっとお前らに真面目な話があるんだ」
そう言うシャンクスの顔はなんだか普段と違っていた。
なんだか…大人だ。
でも、わくわくしてる。
早く聞きたいような、怖いような。
いつのまにか雨の音は気にならなくなっていた
(で、この後シャンクスは、夕食の席で父親候補の名乗りを上げるわけですが、シチューを口一杯頬張ったまま話したので、最初はわかってもらえず、食事が終わってからにするようにエースに指導されました。すごく短いですが、かなり前の拍手お礼SSです)