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星 想

 ふぅ、今年は間に合った
 戻れるかどうか途中まで結構ギリギリって感じだったんだぜ
 いや、もう、むっちゃくちゃ駆けづり回った
 悪い、まずちょっと寝させてくれ
 起きたら何でもするからな
 今年は料理人がいてくれていいなぁ
 力自慢の荷物持ちもいてくれるしな
 何も心配いらねぇな


 そう言ったエースが自分の部屋に入ってから小一時間が過ぎた頃、居間のテーブルに放り出されていた携帯電話が鳴った。エースがポケットからポンと置いた電話。
 キッチンから顔を覗かせたサンジ君の片方の眉毛が上がった。
 サンジ君の買出しにつきあって大荷物を運んできた後にソファで身体を伸ばしていたゾロが上半身を起こした。
「あれ、何か鳴ってるか?それだよな、サクヤ
 そう言いながら自分の電話を耳にあてているルフィが可愛いかった。今日の小さなパーティにナミを呼んだルフィ。一番の友達だって言ってたけれど、何だかちょっと朝からいつもとは違うルフィのワクワク気分が伝わってきている。
 鳴っている電話のディスプレイに目をやると相手の名前が浮かび上がっていた。
 クリス
 伸ばしかけていた手が思わず止まってしまった。仕事、それとも…プライベート。どっちにしてもこれはきっとエースを連れて行ってしまう電話だ。
 みんなの視線を感じながら電話を手に持った。もっと早く手に取っていたらエースに渡しに走ることもできたのに。躊躇っていた時間が長すぎて今にもコールが切れてしまう気がして、喉に何か塊がつまっているような気分で通話ボタンを押した。
「エースさん?クリスです。実は…」
「あ、あの!」
 聞こえてきた涼しげな声に短く割ってはいると言葉は途切れ、沈黙が数秒続いた。
「ひょっとして、サクヤさん?」
 声の感じが変わったような気がした。笑っている?電話の向こうの気配が伝わってきた。
「はい。…あの、エースは帰ってからずっと部屋で眠ってて。ごめんなさい、今起こします」
「あら…あなたの隣りにいるわけじゃないのね?」
 やっぱり笑っている。
 頬が熱くなった。一瞬で浅くも深くもいろいろに受け止めてしまう言葉の意味。
 馬鹿だな、と思った。
「すぐ…すぐに起こしますから」
 早足で居間を通り抜けて行く間に耳に明るい声が流れ込んだ。
「ゆっくりでいいのよ。どうせあなたにもエースさんにも歓迎されない用件だわ。ごめんなさいね、サクヤさん。お兄さんをまたちょっとお借りすることになってしまったの。今夜だけはそうならないようにとても頑張ったんだけど」
「え…いえ、あの、何となくそんな気がしてましたから」
 エースの部屋のドアをノックした。返事はなかった。
「エース?」
 呼んでみても空気は静まりかえっていた。
 ドアを開けるとカーテンを引いた暗い部屋の中でベッドサイドランプがオレンジがかった光をやわらかく放っていた。
「…エース」
 懐かしい色の光の中に眠っているエースの横顔があった。癖がついた髪、そばかす、わずかに曲線を描いた唇。着ているものを脱ぎ捨ててそのままベッドに倒れこんだんだろう。腕や肩から胸にかけてのむき出しの肌から視線を逸らした。おかしいな、と思う。わたしはこんなに大きくなったのに、いつまでたってもエースの方がずっと大きい。大きくてあったかい。エースのくっつき癖のおかげでそれを知っている。そのことがちょっとだけ恥ずかしい。でも…別の気持ちもある気がする。
「エース、電話」
 モゴモゴと口を動かしたエースが手を伸ばした。携帯電話を受け取ろうとしたのだと思って差し出したら、突然手首をつかまれて一気に引っ張られた。
「わ…」
 両足で踏みとどまって一声出した瞬間に今この場の音は全部電話を通じて聞こえてしまっていることを思い出した。また顔が熱くなった。
「エース、あのね、電話…」
 同じ台詞を繰り返しながらエースの身体の上に倒れないために床に膝を落とした。するとエースの大きな手が頭をふわりと撫ぜた。
「…な、サクヤ…」
 呟いた言葉は良く聞こえなかったけれど、エースが寝惚けていることはわかった。それでも。どうしよう。胸の動悸が止まらない。電話の向こうにまで聞こえてしまいそうな気がする。
 本当は引っ張られるままにエースの腕の中に入ってしまいたかったのかもしれない。この頃また少し遠くなってしまった気がするエース。
 ベッドの上の身体がゆっくりと動いた。
 あれ?
 でも、この感じ…
 何か記憶の中に断片を見つけることが出来そうな気がしたとき、のんびりした声が聞こえた。
「ん…サクヤ?ああ、悪い…夢見てた…どした?…ああ、電話…?」
 携帯電話が手から抜かれて頭にのっていた手がするりと離れた。なくなってしまった部分的なあたたかさに、やはり何か思い出せそうな気がした。
「悪いな、寝てた。…出なきゃダメだってことなんだな。わかった、すぐに行く」
 短い言葉のやり取りの後、エースは電話を切った。
 やっぱり。思った気持ちが顔に出ていないことを願いながら立ち上がろうとすると、起き上がったエースがまた頭に手をのせた。さっきよりもそっと静かに。そして真っ直ぐにわたしを見た。
「行きたくねぇな」
 呟いた声は小さく、すぐにエースは笑ったけれど。
 エースがそんな風な言い方をするのをこれまでにあまり聞いた記憶はなくて。
 返す言葉が見つからなくてただ頷いた。そうしたらエースはまた笑った。


 新しい年が近づいていた。
 幼い頃に絵に描いたり夢に見たりするような豪華なパーティテーブルをそっくりそのまま本物にしたような特別な料理の皿たち、そして透明で綺麗な色の飲み物。作ってくれたサンジ君は喜んで盛り上がるわたしたち以上にたくさん笑顔を見せてくれた。少年と青年が混ざったようなその笑顔に魅せられた。
 黙々と飲んで食べていたゾロは時々サンジ君とやりあいながらもとてもやわらかな顔でわたしたちを見守ってくれていた。今夜思いがけなくゾロの恋人の存在を知った。口をすべらせたサンジ君はニヤニヤ笑っていた。静かで強くて綺麗な女性なのだという。ゾロ自身は何も言わずにサンジ君を睨んでいたけど、でもサンジ君がその女性を褒めちぎる言葉を一度も否定しなかった。それが何よりゾロの気持ちを示している気がした。
 ナミは明るく輝いていた。ルフィとは本当にいい仲間なんだな、と思いながら何となく未来の可能性を考えてしまった。お姉さんと2人暮らしだというナミが新年を迎える夜にここにいる。今は家にいるというお姉さんとはこのあと外で待ち合わせる予定だけど。とにかくナミはここには1人で来たかったのかな、と感じた。
 ルフィははしゃいでいた。いつもの食べっぷりを披露しながらずっとナミの隣りにいた。楽しそうで嬉しそうで、その姿を見ていると胸のどこかがぎゅっと動く。このままずっとお日様みたいな笑顔を見ていたい。そう思った。
「あ、ねえ、そろそろ行っていい場所をとっておいた方がいいんじゃない?」
 ナミが立ち上がった。
「そんなに混むの?そのパレード」
 サンジ君が首を傾げた。
 そうか、サンジ君とゾロはこの街で新年を迎えたことがないんだった。
 この街は1年の締めくくりと新しい年の始まりを盛大なパレードで祝う。山車がたくさん出て、大きなバルーンも現れて、子どもから大人まで楽しめる趣向が凝らされている。パレードが始まるまであと大体1時間。確かに、ちょっと急がないといい場所にはもう人が集まりだしている頃だ。
「よし、じゃあ、行くか~!今日も出店がたくさん出てるといいな~。な、サクヤ!」
 この街に来て最初に迎えたパレードの夜から、毎年ルフィは出店の食べ歩きを楽しみにしている。馴染みになってる店もあるようで、言ってみれば年に一度懐かしい友達に会いに行くような感じなのだろう。みんなすぐにルフィを好きになるから。そんなルフィをナミにたくさん見て欲しいと思った。
「あ、ちょっと待っててね。準備してくる」
 部屋に行き鏡の中の顔を見た。
 ちゃんと笑ってる?よし、大丈夫だった。
 箱の表面は透明な艶やかさを持っていた。そっと指を走らせると冷たかった。そして『大切』な感触がした。蓋を開けて小さなそれを摘み上げた。宝物は小さく光を反射した。


 空気よりも軽いガスで満たされた巨大なバルーンたちは曲線を基調としたそれぞれの個性を余すところ泣く発揮しているように見えた。懐かしいコミックやアニメのキャラクターたちはここに来てから毎年の顔馴染みで、多分わたしたちが来るずっと前から街の人たちの古馴染みで、なのに少しも色褪せて見えないのが不思議だった。照明と新年がそこまで来ている空気によるイリュージョン。こちらは良く知らない新し目のキャラクターたちと一緒に子どもたちの羨望の眼差しを受けている。
 車に引かれた山車の上にはあらゆるお楽しみが演じられていた。マジックショー、パントマイム、音楽、ダンス、寸劇、料理にファッションショーまである。毎年恒例の変り種は山車の上での対決で、今年はどうやら腕相撲のようだ。1人が負けるとすぐ観客の中から挑戦者が現れる。山車が前を通ったとき、ルフィとゾロが視線を合わせた。
「なかなか面白いもんもあるんじゃねぇか」
「行くか?ゾロ」
「おう。こいつは見逃せねぇ」
 ルフィはゾロとナミの先にたって走りはじめた。ナミのお姉さんをエスコートしているサンジ君がわたしの方を見た。
「どうする?サクヤちゃん」
「先に行っててくれる?サンジ君。ちょっと待ってる山車があるの」
「ああ…いいけど。でも、なるべく早く追いついてな」
 2人は離れて行った。
 サンジ君を困らせてしまったかもしれない。サンジ君とゾロがこの街にいる理由はシャンクスが2人にわたしのボディガードを頼んだからだ。 この頃はずっと2人の出番はなかったから良かったけれど、そうじゃなかったらきっとわたしのそばを離れることはできなかった。
 またひとつ山車が通り過ぎていった。
 1人でこうして立っているとこの街に来た最初の年の終わりを思い出す。周りがみんな自分より大きな人ばかりでなかなか山車全体を見ることはできなかったけれど、それでも一番華やかな天辺は見えてどれもとても眩しかった。上ばかり見て歩いていたからか、気がついたら1人きりになっていた。隣りにいたはずのルフィがいなかった。前を歩いていたエースがいなかった。シャンクスもベンもヤソップの姿もなかった。わたしが自分でふらふらはぐれてしまったのだと今ならわかるけれど、あの時は何か魔法にかかってしまったような不安でいっぱいになった。ほとんど見知らぬ場所にいることが、自分だけ別の世界に飛ばされてしまったような、自分以外をどこかに連れ去られてしまったような気がして足がすくんだ。
 人の流れの中で急に立ち止まってしまった赤い髪の子どもはきっとかなり迷惑な通行妨害者だっただろう。だけど、この街の人はだれもその子にぶつかったり怒ったりしなかった。ただ首を傾げながら視線を落としてするすると横を通り過ぎて行った。だから余計に固まったままの身体を動かす機会はなくて、ずっとそのまま立っていた。止まってしばらくしてから寒さに気がついた。喜びと興奮が消えた身体は熱よりも冷たさを引き寄せるようだった。
 次の山車が見えてくる前に、それがあの山車だとわかった。
 金色に光る空気が透明な音と一緒に落ちてくる。手のひらを上向けて差し出すと、小さな星がひとつ、ふたつと落ちた。その山車は『星』。金と銀の星で飾りつくされた塔の天辺から小さな星々を散らしながら過ぎていく。あの日、体と一緒に心も冷えかたまってしまったわたしは目の前に降り出したその金色の雨に心惹かれて顔を上げた。綺麗で夢のようでただ見とれた。その気持ちはそれから毎年同じ。ただ星を降らせるために過ぎていく静かな山車。大好きだ。
 わたしは泣かない子どもだったけど、エースはわたしが泣いてしまったかもしれないと想像して必死で探し回ったと言っていた。だから人ごみの中にわたしの赤毛を見つけたときに大きな声で名前を呼んだ。エースの声が聞こえるまでわたしは夢中で星を眺めながら山車の横を歩いていた。そのわたしを止めるものは誰もいなかった。もしかしたら出し物の一部だと思われていたのかもしれない。星の山車の周りにはスパンコールを散りばめた衣装と仮面に身を包んだ線が細い姿がいくつも見え隠れしながら歩いていたから。
 自分の名を呼ぶ声を聞いて初めて自分が1人だったことを思い出した。でもそれを思い出したときにはもう寂しくなかった。エースの声がぐんぐん近づいてきて、わたしの手を力いっぱい握ってくれた。もうひとつの手は髪をぐしゃぐしゃになるまで撫ぜてくれた。
「ごめんな、もう心配すんな、サクヤ
 それからずっと手をつないでくれた。
 だからそれからはパレードを見ると心があたたかくなる。迷子になるのも見つけてもらえるのも、幼いわたしにはとても贅沢なことだったのだ。その日に降ってきたのを拾った星屑をひとつだけ箱に入れて宝物にした。ひとつで十分だった。それは今ジャケットのポケットに入っていて、今年降っている星とほとんどそっくりに見えたがどこかが違っていた。
 両手を上に向けて伸ばした。今年の星を集めてエースにあげよう。この山車が出てきたら新しい年はもうすぐだ。そしたらエースの誕生日もやってくる。両手に入る分だけ集めたらきっとキラキラ眩しく輝くに違いない。
 上ばかり見ていたら続けて何人かの人とぶつかりあった。あのときにはこんなことはなかった。すっかり体が大きくなって邪魔な体積と面積が増えてしまったってことだろう。謝り合う顔は誰もが微笑んでいた。笑顔を返すと少しだけ寂しくなった。こう思えるのもきっと贅沢なことだ。少し走って追いかければルフィたちに追いつくこともできる。
 でも。
 手のひらから零れた星屑が道路に小さな灯りを描いていた。拾おうか。迷っていると右手が不意にぬくもりに包まれた。
「また迷子か?」
 気配に、声に、全身が包まれた気がした。
 夜でよかった。きっと気持ちが全部出てしまっている顔もすこしそらせば影ができる。深呼吸をひとつしてから横に現れたエースを見上げた。エースは笑った。昔とおんなじに白い歯を見せて。
「もう、ほんと、ギリギリセーフばっかりだったな、今年は。『星』を探せばお前がいるってわかってたから、また走り回っちまった。でも、見つけたらまた1人なんだもんな。どうした?ルフィたちは何の腕試しに行ったんだ?」
 やっぱり、エースだ。お見通しだ。
「今年は腕相撲の山車があるの。ルフィとゾロ、嬉しそうだった。すこし先の方に行っちゃったと思うけど、走ればすぐ追いつけると…」
 エースは首を小さく横に振った。
「いいんだ。どうせまたすぐに戻らなきゃならないからな。お前にこれ、渡したくてさ。それだけだから」
 エースは両手をわたしの首の後ろに回した。
「エース?」
 手が離れたと同時に胸元に何か小さなものがぶつかった。見下ろすとそこには金色の星があった。
「これ…」
 ポケットから取り出した星を手のひらにのせた。金色に輝くその光り方もそっくり同じペンダントトップ。
「お前が迷子になった年のやつ。この間ひょっこり出てきてな。鎖をつけてもらったんだ。お前、この星、大好きだからな~。年が変わるときに渡さないとちょっと意味が減っちまう気がしてさ」
 意味。
 見上げると一瞬真面目だったエースの瞳がふっと曲線になった。
「わたしはエースに今年の星をあげたくて集めてたんだけど…」
 エースはわたしの視線を追った。地面に落ちても星々は輝いていた。
「いいさ、俺はこっちをもらう。これ、あの年の星だろ?」
 エースはわたしの手から星をとって胸のポケットに入れた。
 どうしてエースには何でもわかってしまうんだろう。溢れそうな気持ちを堪えて普通の笑顔を作った。
 迷子にならないようにな、と呟いたエースが手を繋いでくれたとき、街のあちこちから一斉に鐘の音が響きはじめた。カウントダウンをしていた人々だろう、キスを贈って抱き合う姿がたくさん見えた。わたしたちの周りの人たちも自然とその流れに乗りはじめたが、1人の男性がわたしに手を差し出して頷きかけるとエースは繋いでいた手を強く引いてわたしを自分の後ろに隠した。
「この子はダメだ。俺が最初で最後」
 言葉の意味がわからないまま広い背中を見ていると頭の天辺に触れるエースの唇を感じた。
「新しい年おめでとう、サクヤ
「…お誕生日おめでとう、エース」
 顔が熱くて、それが手にも伝わっている気がした。だからきっとこんなにエースの手を熱いと感じるんだろう。
 エースはキスと抱擁の時間が過ぎるまでずっとそうやって立っていた。過保護な兄。それでもいい。とても嬉しかった。

 山車はこれからさらに通りを行進して最後は郊外へ消えていく。子どもの頃に聞いた噂では、街の外のどこかに一年中続くパレードの国の入り口があってそこから新旧の年の狭間に街に来てくれることになっていた。残念ながら子どもとはいっても山車のそれぞれにかかれたスポンサーの会社名や団体名を読めて意味が分かる年になっていたけれど、もしももっと幼かったらきっとエースとルフィと3人でその国の入り口を探しにでかけただろう。
 最後尾の山車の後姿を見送ってしまうと新年の夜は再び静けさを取り戻す。
 家族と家に帰る人、さらに騒ぎたくて山車を追いかけていく人、店に繰り出す人。過ぎていく人の中でエースとわたしはただ立っていた。わたしは立ってエースの呼吸と体温を感じていた。
「じゃあ、行くな」
 そう言うとエースは手を振りながら人の流れの中に姿を消した。現れた時とは逆にふわりとどこかに消えてしまった。時々エースが行ってしまったまま戻ってこないんじゃないかと思うときがある。そういう時はエースが残していってくれたぬくもりを思い出して気持ちをあたためる。
 胸元で金色の星がクルリと回った。
サクヤ~~~~!」
サクヤちゃ~~~ん!」
 ルフィとサンジ君の声が聞こえた。その途端に時間が普通に動き出した。
 ルフィが抱えている大きな箱はきっと腕相撲の賞品だろう。
 サンジ君はルフィと並んで走ってる。
 ゾロは仏頂面のままナミのお姉さんと並んで歩いているが、ほんの少しいつもよりも瞳がやわらかい。
 ナミとお姉さんは仲よさそうに言葉と笑顔を交わしている。
 きっと今夜はお客さんが2人家に泊まっていってくれる。ゾロとサンジ君もシャンクスの部屋を使えばいい。
 みんなに向かって力いっぱい手を振った。
 年越しの魔法の時間は過ぎた。今日はエースの誕生日。帰ってくるかどうかわからないけれど準備して待つことができる。新しい年の初めの大切な日。
 通りは落ちている星屑の二色の光に染まっていた。この道を通って部屋に帰ろう。きっと素敵な初夢を見ることができる…そんな気がした。


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