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冬っぽい5つの言葉

◆◆タイトル こたつ◆◆

「…こたつ?」
「そうなんだよ、サクヤ!テーブルんとこに座るとよ、布団があって中がすっげぇあったけぇ~んだよ。あれはいいぜ~!だからよ、ちょっと作ってみねぇか?」
「でも、ルフィ…ああ、そっか。床暖房の上にテーブルを置けば」
「お!お前、やっぱり頭いいな~。んじゃ、俺、テーブル探してくるぞ」
(ルフィ、張り切って居間から姿を消す。サクヤ、シャンクスの部屋に行き、ダブルの幅の毛布をベッドから剥がす)
「あらら、何やってんの?サクヤちゃん。てつだおっか?洗濯?」
「ううん。…こたつ」
「こたつってお前…作るのか?」
「うん。ルフィがテーブルを探しに行ってるの」
「ああ、あいつの選択にはちょっと不安があるな。ほら、クソマリモ、ちょっと行って参加して来い」
「…なんで俺が」
「俺はその他のセッティングを担当するんだよ。こたつって言ったら結構必要なものがあるんだぜ?」
サクヤとゾロ、疑問を浮かべた瞳を見交わす。ゾロ、しぶしぶ居間から出て行く)
「こたつってそんなにいろいろ必要なものがあるの?サンジ君」
「はは、そっちは任せてよね。でもさ、テーブルはあいつらが探してくるとして、サクヤちゃんが毛布…うん、天板がいるな」
「天板?」
「そう。テーブルと天板の間に毛布を挟むの。そうしないと何ものせられないしね。何かちょっと厚めの板っぽいやつ、ないかな~」
「板、ねぇ…」
(1時間後。ふらりと帰ってきたエースは居間の真ん中の光景に目を丸くする)
「えらく楽しそうだな、お前たち。宴会か?」
(エース、毛布を捲ってみる。土台になっているのは物置に入れてあった大きなガラステーブルであることを確認)
「ビリヤードもできるこたつってか?」
(天板は足を外したファミリー用のビリヤード台。その上にクロスをしいてあり、今まさに湯気が立ち上っている鍋とボウルに持った天津甘栗、オードブルとプチフールの皿、各種ドリンクが並んでいる)
「こたつっていったら、こんだけいるんだってサンジが作ってくれた!」
(ルフィの満面の笑みにエース、目を細める)
「よかったな。じゃ、俺も入れてもらお」
(エース、一瞬目に見えないほどの躊躇いを浮かべた後、するりとサクヤの隣りに滑り込む。僅かに頬を染めたサクヤ、他のものの顔には笑みが浮かぶ)
「あ、そうだ!」
(ルフィ、突然立ち上がる)
「どしたの?お前」
「こたつって言ったらよ、もうひとつ、忘れ物があるんだ!」
(キッチンに入っていったルフィ、籠に盛ったみかんを持って来てドン!と真ん中に置く)
「これ!ナミがこたつにはみかんだって言ってた」
(エース、笑う)
「こんだけ揃ってたら朝までこっから動かなくてすみそうだな。とりあえず、乾杯するか?」
「あ、動かないで、サクヤちゃん。今俺がみんなにドリンク準備するからね。サクヤちゃんは何がいい?スペシャルなカクテルもできるよ~」
(注文を終えたサクヤ、ふと、隣りを見る。視線が出会ったエースの瞳に浮かんでいた深い微笑に引き込まれて自分も微笑を返す)
(エース、静かにサクヤの頭をポンっと叩く)


◆◆タイトル 忘年会◆◆

(↑の『こたつ』の続き)

「忘年会っつぅのは、今年1年のいろんな苦労を忘れるための会だよな」
「そうなのか?サンジ、物知りだな~。俺はてっきり、全部忘れるくらい食う会ってやつだと思ってたぞ」
(ゾロ、思わず小さく噴出す)
「それならお前、毎日が忘年会だろうが」
「んなことねぇぞ。俺、今夜はとことん食うからな!」
「ちゃんと味わえよ。そんなら受けてたってやる」
(サンジ、シャツの袖を肘まで捲くる)
「…忘れたいことなんて、ないな」
サクヤ、ルフィたちの会話を聞きながら平和そうな光景に微笑む)
「じゃあ、全部来年に持っていきたいか?」
(エース、サクヤのグラスに残っていた酒を綺麗に飲み干す)
「うん。全部…ずっとね」
「全部、ずっとか」
サクヤの唇の動きを真似たエース、自分のグラスをサクヤに向けて小さく上げる)
(互いに自分が口にすることのない言葉を胸の中でそっと呟く)


◆◆タイトル 鍋◆◆

(↑『忘年会』の続き)

「くぉら!何も考えずに無茶苦茶突っ込むんじゃねぇ!」
「なんでだ?煮えりゃぁ、何でもいいんだろ?俺、早く食いてぇ」
「こういうのは順番とか位置取りとか、食べやすくて見栄えも整えるにはコツっつぅもんがあるんだよ!とにかく、ここは俺に任せとけ…って、くぉら!そっちのマリモマン!酒の肴になりそうなものばっか食うな!野菜食え、野菜も!」
「るせぇ。好きに食わせろ。そうしたら味は認めてやる」
「なんだ、この、偉そうに…!ああ、サクヤちゃん、お代わりは?どの具が一番気に入った?」
「いい。サンジ、お前はそっちで猛獣使い役、頼む。サクヤは俺が、面倒見る」
「特権だよな~、エースさんの。サクヤちゃん、嬉しそうで思いっきり可愛いし」
「…こいつが逃げ出す前に、やめとけ。ほら、俺たちが食べる分、確保してくれよ」
「了解!って、こら!このクソガキ!そんなデカイ丼を取り皿にするんじゃねェ!みんなと同じスタートラインに立て!正々堂々と勝負しろ!」
「…鍋をつつきながらの会話とは思えねぇな」
(当事者以外の3人、頷きあいながらグラスを合わせる)


◆◆タイトル クリスマス◆◆

(↑『鍋』の続き)

「日にち的には忘年会っつぅよりもクリスマスの方が近いよな」
(サンジ、追加の大皿を2つ置き、ワインのボトルも隣りに並べる)
「クリスマスか!あ、でもな、サンタとはフーシャ村で別れてきたもん。村にいた頃も忙しすぎてあんまり来てくれなかったしよ」
(サンジとゾロ、ルフィの真意を確かめるようにそっと顔を見る)
サクヤとエース、微笑する)
「なに、お前、サンタクロースを嫌いな子どもだったのか?だったら何か、意外すぎるな」
「ん?いや、全然、嫌いじゃねぇぞ。とにかくいろんな子どもたちに幸せを運ぶんだろ?すげぇよな。俺は、いっつもエースのケーキがあったから、クリスマス、大好きだったぞ。今も好きだ」
「へェ。俺も食べてみたいな、エースさんのケーキ」
「よせよ。プロの料理人に食わせられるもんじゃねぇ」
「…そっかなぁ。そうじゃない!って顔で俺をじ~っと見つめてるレディとガキがそこにいるけど。はは、いいなァ、幸せそうな応援団」
「まあ、一応、家族…だしな」
「それもさ、うらやましいですよ。俺ら、そういうのに縁、なかったもん。な?マリモくん」
「…一緒にすんな」
(エース、2人の顔を順番に見る)
「ま、今年は多分、ケーキを作ってる時間はない。ギリギリでも滑り込みで帰ってこようとは思ってるけどな。だから、頼むな、極上のケーキ。サンジが作ってくれると思ったら安心できる」
(サンジ、綺麗に一礼する)
「お任せを。とびっきりのケーキを作らせて貰いますから。サクヤちゃん、手伝ってくれる?マリモはつまみ食いを狙うにちがいねェ侵入者を撃退する役な」
「…面倒くせぇな。体力勝負じゃねぇか」
「適材適所ってな。ほれ、前祝いに飲ませてやるよ」
「…雪でも降るんじゃねぇか?」
(恐る恐るグラスを差し出すゾロにサンジ、思い切り笑う)


◆◆タイトル 雪◆◆

(↑『クリスマス』の続き)

サクヤ。ほら、サクヤ
(夢の中に聞こえる囁き声に反応して半分目を開けるサクヤ。それを確認すると、エース、サクヤの肩を抱いてこたつからそっと引っ張り出す)
「エース…?」
「いい、まだそうやって半分寝てろ。すぐに目が覚めちまうからな」
(エース、サクヤを支えながら歩いて行き、ベランダのドアを開ける。肌にちょっと痛いほどの空気が流れ込む)
「ああ、思ったよりもさらに寒いな」
(エース、シャツを脱いでサクヤの肩から羽織らせ、そっとその上から腕を回す)
「冷たい…」
(目を開けたサクヤ、状況を理解する前に空から落ちてくる白いものに気がつく)
「…雪!雪!エース」
「早いよな。年内に見られるとは思ってなかった」
(2人、そのまま空に見とれる)
「ルフィ…」
「ああ、喜ぶな。だけどな、もう少しだけ…」
(頭の上からサクヤの耳に流れ込むエースの声。伝わる体温)
「…みんな、寝てる?」
「ああ。ルフィはともかく、ゾロも酔わねぇくせに思い切りスコーン!と寝落ちしやがったしな。サンジは給仕役が終わった途端に陽気に酔っ払っちまったし。どこまで覚えてる?お前は」
「うん…サンジ君に初日の出デート…とか何とか誘われたのは覚えてる。それからすぐにサンジ君、ニコニコしながら寝ちゃったね」
「…それは、もう、忘れとけ。ったく、酒の勢いでとち狂いやがって…」
「うん?」
「いや、お前じゃねぇ、お前じゃ。あの陽気なコックさんだ」
(エースの腕に力が入る。サクヤ、目を閉じる)
「…寒くない?」
「…お前があったかいからな」
(落ちる雪が増え、空全体が白く染まる)
「エース」
「うん…綺麗だな」
(今年まではいい。来年こそ兄離れしようと心に誓うサクヤ
(ただ腕の中にサクヤを抱いてそっと髪に唇を触れるエース)


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