festival

 大きな鍋の蓋が開くと湯気が立ち上った。細くて硬い麺を丸い縁に沿って鮮やかに捌き入れる八戒の手を見ている二組の目は、そっくりに大きく見開かれてい た。

「湯気、熱いから気をつけてくださいね」

 悟空と 柚螺。二人に向いた八戒の目元と口元には穏やかな抱擁を思わせる表情があった。

「こうして寸胴鍋でスパゲティを茹でる時、僕はいつも気になってたんですよ・・・・ほら、どうしても一本のうちの下3分の2くらいが先にお湯の中に入るわ けでしょう?どんなに手早くやっても最初は湯に触れない残り3分の1とは絶対に茹で上がりに差があるはずなんです」

 八戒が作ってくれるという『スパゲティ』という名前の料理をこれから初体験する予定の 柚螺は実感がつかめずに首を傾げ、一方こちらは何度も食べたことがある悟空は顔いっぱいの笑顔になった。

「でもさ、いつ食べたって滅茶苦茶ウマイじゃん、八戒のスパゲティ!なあなあ、今日はどんなヤツ?」

「ふふ。悟空は沢山食べてくれるからつくり甲斐がありますよね。今夜はちょっと暑いので冷たいのにしようと思ってるんです。手伝ってくださいね」

「おう!」

「あ、そうだ。 柚螺は三蔵を呼んで来てください。あと6分で茹で上がりますからできあがりまで・・・そうですねぇ・・・大体10分というところです。そろ そろ悟浄もワインを抱えて戻ってくるでしょう」

 『 柚螺
 短い音の響きに思わず 柚螺はにっこりした。知り合った最初の頃は八戒は『さん』、悟浄は『ちゃん』をつけて 柚螺の名前を呼んでいた。それが最近二人ともそれをつけなくなった。理由はわからないけれどある朝に八戒が「おはようございます、 柚螺」と微笑んでくれたのが最初だ。
 八戒と悟浄の部屋を出た 柚螺は隣りの三蔵と悟空の部屋のドアの前でひとつゆっくりと深呼吸した。学校からの帰り道、三蔵に見せたいものを持ってきていた。



 ノックの音が2回、聞こえた。
 三蔵はもたれていたソファからゆっくりと身体を起こした。 柚螺だということはすぐにわかる。部屋に入る前にノックするのは八戒と 柚螺だけで、二人のテンポは全然違うからだ。
 帰ってきたか。
 なんとなくいつも三蔵はそう思う。数年前までの記憶と声を失っていることは始まった学校生活を時々つまずかせているらしい。それとなくそれを報告する八 戒の口ぶりから八戒もひそかに心配していることがわかった。でも 柚螺は四人の前では笑顔しか見せない。時にはそれを頑固と感じてしまうほどだ。

「開いてる」

 三蔵が答えると静かにドアが開いて色白の顔が覗き、青い瞳が輝きを見せる。「おかえり」でもなく「ただいま」でもない二人の言葉のない会話。時々三蔵は ひどくくすぐったいような感覚を覚えたりもする。
  柚螺は座っている三蔵の前に来てポケットを探った。悟空か八戒からの伝言を伝えようというのだろう。小さな端末を半分引っ張り出しかけたと ころで何かの紙が一枚、ひらりと床に落ちた。拾おうと手を伸ばした三蔵には見えなかったのだが、その瞬間に 柚螺の顔を横切ったのは緊張の色だった。

「・・・ああ・・・ステーション前の馬鹿騒ぎか。わざわざ出かけていくやつの気が知れんな」

 文字と写真の色の洪水のようなチラシを一瞥した三蔵は 柚螺の顔を見て言葉を切った。一瞬 柚螺はチラシを受け取ろうとせずに放心しているように見えた。

「どうした?」

 ハッとした 柚螺は紙切れを受け取ってポケットに突っ込んだ。それから微笑を浮かべるとともに端末を開き、八戒からの食事開始の伝言を細い指先で滑らか に打った。



 冷たいパスタと冷えたワイン・・・悟空はコーラ、 柚螺はソーダを飲んだ・・・は心地良く喉を滑り落ち、全員の胃袋におさまった。コーヒーが落ちる良い香りが部屋に漂いはじめた頃、思い出し た悟空が椅子から飛び上がった。

「なあ、そういえばさ、これ、もらった!」

 ポケットから引っ張り出された幾重にも折りたたまれた紙切れの正体は三蔵だけではなく見たもの全員にすぐわかった。

「ああ、もらいましたよね。今年もやるんですね、お祭り」

「俺も酒屋のおね〜さんにもらったぜ。んで、こう、ゆ〜っくりと瞬きされちまってよ!見とれてたら誘うの忘れちまった」

「行くだろ?今年も!行こうぜ、三蔵!」

「・・・面倒くせぇ」

「三蔵、去年もそうだったじゃん」

 昨年は渋る三蔵を何とか説得しようとした悟空は三日間粘り続けた。その間にくらったハリセン攻撃の数は記憶にない。結局祭りの会場であるチューブのス テーションの近くにたまたま用事ができた三蔵を悟空たち三人で待ち伏せして半ば強引に同行させた。悟空たちの勝利!と思えたのはほんの束の間で、10分後 には三蔵は一人で家路についていた。

「なあ、今年は 柚螺もいるんだしさ」
「そうそう、見せてあげたいよね、 柚螺にも祭り!」
「今日の帰り、 柚螺、とても楽しそうでしたね。ワクワクしてるんじゃないかと・・・おやおや」

 四人の視線が一点に落ちた。そこには椅子からずり落ちそうになりながらやわらかな寝息をたてている 柚螺の姿があった。八戒は目を細めた。

「頑張ってるんですよ、毎日。教職員の中にはナンバーズに対してまだ偏見を持ってる人間もいましてね・・・ 柚螺は今そういう人間にとって格好の標的なんです。帰りにチラシをもらった時、すごく嬉しそうだったんですよ。三蔵、 柚螺、あなたに何も言いませんでしたか?」

  柚螺が言う前に自分が結論を突きつけてしまったのだろうか。心の中で思いあたった三蔵は黙って煙草を咥えた。三蔵は人間が群れている場所が 好きではない。祭りの陽気さもにぎやかさも自分とは異質なものを感じるばかりだ。悟空がもっと幼かった頃に気まぐれで何度か連れて行ったことはある。それ だけでもう一生分の祭りを終わったのだと毎年考える。それはこれからも変わる予定はない。
 三蔵の沈黙の意味をそれぞれに受け取った三人は額を寄せ合った。

「仕方ねぇな。三人で 柚螺を連れてくか」
「金魚すくい!あれ、教えてやろうっと」
「明日は 柚螺は早帰りですからちゃんと一緒に待っててくださいね、悟浄」
「わあった、わあった」
「焼きそばとかあるかな〜。きっと喜ぶよな、 柚螺
「おめぇがだろ」

 三人の声を聞きながら三蔵はただ煙を吐いた。



「あれ? 柚螺と一緒じゃないんですか?悟浄」

 黄昏時の薄明かりが差し込んでいる部屋の中を帰って来た八戒はぐるりと見回した。

「へ?帰ってこないからてっきりお前らと一緒に帰ってくることになったんだと思ってた。三蔵も朝出たきり戻ってないみてぇだしよ」

「え、なに、 柚螺いないの?」

 三人は一応 柚螺の部屋のドアをノックして呼んでみた。中は静まり返ったまま返事はなかった。

「目覚ましがちゃんと動いてたら・・・」

 八戒は朝の様子を思い出していた。どうやら目覚まし時計は夜中の3時過ぎに唐突に故障したらしかった。窓から入る陽光がやけに明るいことに気がついた時 には、この後すべてを全力で行わないと遅刻の二文字が刻まれる事態になっていた。食事もそこそこに駆け出していく三人を見送った三蔵と悟浄の顔はまだ半分 目が覚めきっていない気だるさが残っていた。三蔵に借りた車をフルスピードでとばしてやっと間に合った八戒たちは挨拶もそこそこに分かれてしまったのだ。 勿論、帰りの約束などできるはずもなかった。

「どっか寄ってるのかな。もうすぐ帰ってくるかも」

「どうでしょう・・・」

「なに、どしたの?その顔」

「いや、ちょっと気になる感じだったので」

 八戒は祭りの話をした時の三蔵の顔を思い出していた。無口でだんまりはいつものことだったがあの時、一瞬三蔵の表情に変化があった。そう・・・ 柚螺の名前を出した時に。

「どうする?探しに行く?」

「そうですねぇ・・・」

 八戒の目は窓の外を見つめていた。



 祭りというのはこんなにも勢いがあるものだったのか。
  柚螺は圧倒されて立ち止まっていた。
 帰り、ステーションに隣接した広場はちょうど祭りの準備の真っ最中らしかった。様々な色と柄の旗がずらりと並べられ、声を張り上げながら作業に没頭する 姿がいくつもあり、忙しさを背に駆け回っている姿もあった。
 邪魔になってはいけない。
  柚螺は広場には入らず真っ直ぐに自分の部屋に向かって歩いた。ステーションから部屋までは歩いて20分弱かかる。俯いて一歩一歩を意識しな がら歩いた。道の半分を過ぎたあたりで 柚螺の歩みが遅くなった。
 『気が知れんな』
 昨夜から何度も心の中で再生を繰り返した三蔵の声。そして祭りというものにひどく惹かれている自分の気持ち。とうとう 柚螺は足を止めた。このまま部屋に帰ったら、そして三蔵が帰って来ていたら・・・今度こそ自分は三蔵にあのチラシを差し出してしまうかもし れない。昨日はそうする前に偶然三蔵の気持ちを知ることが出来て幸運だったと自分に言い聞かせた。三蔵と祭りに行きたい。突然思ってしまった気持ちを変え るのは予想よりも難しかった。それと同時に一人で行くのは怖い気がしていた。
 やっぱり部屋に戻って悟空たちの帰りを待とうか。三蔵の気持ちを知ってから 柚螺はなぜか悟空たち三人にもチラシの事を言わなかった。もしかしたら・・・きっと悟空はこういう賑やかそうな場所が好きだ。笑って一緒に 行ってくれる。でも。
  柚螺は短く息を吐いた。自分はただ三蔵と行ってみたかったのだとわかっていた。みんな一緒でもいいし、楽しいだろう。とにかくそこに三蔵が いて欲しかった。
 三蔵。
 でもそれはただの我侭だから。
  柚螺はゆっくりと身体の向きを変えた。行ってほんの少しだけ祭りというものを見てこよう。自分の気持ちをちゃんと自分で満たそう。この街に 来てからいつもどこか人に対する怯えを捨て切れていなかった。人に傷つけられる、そして人を傷つけてしまうことが怖かった。
 でも、帰る部屋ができた。「おかえり」と笑ってくれる人ができた。血まみれの心と身体をそのまま受け入れてくれる人がいる。もう怖がる必要はない。
  柚螺は来た道を戻るため最初の一歩を踏み出した。



「五感、というのがあるでしょう?人はこの五感で相手を感じ分けるものだと思うんです」

「ごか・・ん?」

「あのなぁ、そんくらいわかれよ。さしずめお前なんて味覚のかたまりなんだからよ」

 さらに疑問符だらけの表情になった悟空に八戒は笑った。

「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚・・・平たく言えば目で見る様子、耳で聞く音、鼻でかぐ匂い、舌で感じる味、手や身体で触れた感覚、という五つです。ほ ら、僕はこの頃腕をふるって料理してるでしょう?これは 柚螺の味覚に訴える狙いもちゃんとあるんですよ」

 微笑んだ八戒に悟浄は呆れ顔で両手を上向けた。

「胃袋攻撃は結構効果あるかんな〜。お猿ちゃんもすっかり餌付けされてるし。じゃ、俺は視覚と触覚で・・・」

 言いかけた悟浄の声を遮って八戒は笑みを深めた。

「無理ですよ、悟浄。僕の見たところ視覚と聴覚はすでに三蔵が占拠しています。店で最初に 柚螺が三蔵を見て歌を聴いたときにね。触覚といえば 柚螺は悟空とじゃれてるときにとてもいい顔をしますし」

「う〜ん?何かよくわかんないけどさ、俺、 柚螺好きだもん」

「かぁ〜っ!そういやお前、ソファベッドでくっついて眠ってやがったしな!三蔵の野郎は・・・まあ確かに歌はそこそこいけるけどよ。でもよ、ちょっと待 て。そうなるとあと残ってんのって・・・嗅覚かよ?!」

 悟浄は頭を抱えて座り込んだ。

「嗅覚っつぅことは匂いだよな・・・・匂い・・・香り・・・」

「あ、俺、餃子の匂い、好き!」

「よりによってそう来るかよ、このバカ猿!」

「るせぇな!いい匂いじゃん、美味そうで」

「あのなぁ、 柚螺の気持ちを和ませようってのに生ビールの親友みたいな匂いさせてってどうするよ」

「どうするって、食う!」

「お前に食われてたまるか!」

 とっくに論点がずれている二人を眺めながら八戒は眼鏡の位置を直した。

「・・・でも結局は理屈じゃないんですけどね」

 呟きは夕日の光の中に吸い込まれた。



 ここに来てはいけなかっただろうか。 柚螺は広場に入っていく人々が過ぎていく中、ただ立っていた。
 黄昏が過ぎて落ち着いた闇が広がりはじめていた。広場には照明と音が溢れていた。宙で点滅する色、圧力を感じる音の重なり、客を呼び込む人々の声。広場 全体がどこか異質な空間に変化したようだ。その空間に向かって腕を絡ませあった恋人たち、笑顔を向け合う親子、気軽に会話を交わす友人たち・・・様々な組 み合わせの人たちが吸い込まれるように入り口の門をくぐっていく。そのすべてが 柚螺には眩しいものに見えた。ここまで来て一人でこの中に入って何をしようと思ったのだろう。 柚螺の足は静かに一歩、後ろに下がろうとした。
 不意に身体に衝撃を受け、よろめいた。会話に夢中になっていた女は 柚螺の姿に気がつかなかったらしい。声の代わりに視線で謝罪する 柚螺の様子は誤解され、女とその連れは数秒足を止めてキツイ視線を放ってから背を向けて広場に消えて行った。一度ぶつかるとまるで転がりだ したボールのように 柚螺の身体は群集の中で翻弄された。どっちを向いても人がいて、 柚螺の身体を邪魔にした。逃げる事も人々の歩みを止める事もできなかった。心の中で恐怖感だけが増した。

「何だよ!」

 恋人を腕の中にかばうように抱いた男が 柚螺の身体を手で突いた。このままでは前にいる人間に体当たりしてしまう。 柚螺はそれを避けるために身をよじった。自分がここで倒れてしまえばいい・・・そう思った。

「・・・ったく」

 舌打ちと声が聞こえた。手が力強く 柚螺の身体を引き上げた。
 薄闇の中で光る金色の髪と 柚螺の顔を見下ろしている紫色の瞳。
 三蔵。

「きっちり前見て歩け」

  柚螺の手首を掴んだまま三蔵はスタスタと広場に入った。心の中で引いていた境界線をあっさりと越えてしまった。 柚螺は後について歩きながら後ろを振り向いた。たったそれだけの距離が随分遠かったのだ。視線を戻すと三蔵が足を止めた。

「で、何が見たいんだ?」

 三蔵は 柚螺の手を離さなかった。 柚螺は三蔵の手のぬくもりに泣きそうになり、慌てて首を小さく振った。どうしてここに三蔵がいるのか。なぜ当たり前のようにいつもと同じ不 機嫌そうな顔でいつもと同じように話かけるのか。わからなかったがただ、嬉しかった。

「あ、 柚螺と三蔵、め〜っけ!」
「おいおい、何妙に目立ってんの、そこの二人」
「三蔵、それじゃあ手を繋ぐというよりは容疑者連行するみたいですよ〜」

 口々に叫ぶ三人の声に三蔵は黙って 柚螺の手を離した。 柚螺は飛びついてきた悟空に笑顔を向けた。

「な〜んだ、二人とも来てたんじゃん!何?来たばっか?よかった〜。ならさ、先ず焼きそば食おうぜ」

 悟空が 柚螺の手を引いた。

「よっしゃ!祭りの極意、ナンパ!・・・の前に、なあ 柚螺、何かわかる?」

 悟浄が 柚螺の前に心持ち身体を屈めた。不思議そうに悟浄の顔を見た 柚螺はやがて悟浄の赤い髪に指先を触れた。

「お、わかったみてぇだな。いいねぇ、違いがわかる女になれるって証拠だ。髪にちっとばかし店のおねえさんお勧めのコロンをつけてみたの。爽やかなお兄さ ん風だろ?」

「てゆうか、 柚螺だってほんとは春巻きの匂いの方が好きだよな?」

「こら、てめぇはいい加減中華料理から頭離せ」

 結局見慣れた光景に落ち着いた三人の様子を見ながら八戒は三蔵の隣りに立った。

「やっぱり 柚螺の声が聞こえたんですか?三蔵」

「・・・通りかかっただけだ。祭りに浮かれた連中の中で突っ立ってればいやでも目立つ」

「タイミングぴったりで幸運でしたね」

 八戒の笑みに言葉は返さず、三蔵は三人に目を戻した。

「今夜は射的、やりますか?金魚すくいの予算は残しといてくださいね」

 反射的に口を開きかけた三蔵はすぐにまた口を閉じた。

「からかい甲斐のない人ですねぇ」

 微笑した八戒の手には膨らんだ小銭入れが握られていた。



 金魚26匹・・・これは八戒vs悟浄の金魚すくいの成果。
 食べたもの10種類・・・これの8割強は悟空一人の胃袋に消えた。
 両腕で抱えるサイズのぬいぐるみ・・・これは三蔵が射的の最後の一発の・・・くしゃみと同時に発射した弾だったが・・・成果。
 中型サイズのトロフィー・・・これは悟空が腕相撲大会で獲得したもの。
 五人はそれぞれに満ち足りた思いで歩いていた。 柚螺は両腕でぬいぐるみを抱いていたが、前がよく見えなくてしょっちゅう首を伸ばして前方確認をしていた。

「そんなじゃ歩きにくいだろ。どら、部屋に着くまで交代だ」

 悟浄は手を伸ばしてぬいぐるみを持ち上げると肩車してみせた。

「あれ・・・そのペンダント・・・」

  柚螺の白い喉元に光ったものに気がついた八戒は呟きかけ、その瞬間に背後から漂ってきた殺気に口を閉じた。 柚螺の首にかかっていたのは小さな石がついたペンダントで、光を受けて反射するその色はちょうど三蔵の瞳の色によく似ていた。

「ふふ」

 笑った八戒は次に 柚螺と手を繋いでいる悟空の手首にこれまた見慣れない色鮮やかな輪を見た。プロミスリング・・・あれは確かそう呼ばれているものだと思っ た。

「不器用ながらいい保護者ですよね、あなたは」

 振り向かずに言うと低いため息が返ってきた。

「誰が保護者だ」

 続いたのはぴったり予想通りの台詞だった。

2006.7.1

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