「お〜〜〜〜い、ナミさ〜〜〜〜ん!」
サンジとルフィがようやく見つけたとき、ナミ・
リン・ロビンの3人は洒落たブティックから出てきたところだった。ナミが大きな袋、ロビンが小脇に箱を一つ抱えている。
「まったく、
リンが誉めてくれるとついつい買わなきゃいけない気になっちゃうじゃない。なのに
リンは全然買わないなんて、なんだかちょっと違わない〜?」
ナミが言い、
リンは笑いながらロビンの向こうに隠れた。
「ナミさ〜〜〜〜ん!」
「ナミ〜〜〜〜〜!」
走り寄る二人の姿はなんだかどちらも負けないほどわくわく気分をはなっている。
「サンジ君にルフィ。どうしたの?」
「ナミさん、ちょっと今日は特別予算を組ませてくれ!それから、
リンちゃんを貸してくれ!」
「ナミ〜!サンジがでっけぇケーキを作ってくれるんだ。いいだろ〜?」
ナミは額に指をあて、突然指名された
リンは目を丸くした。
「なんだか要点が見えない話ね〜。つまり、特別予算はケーキのためで、
リンが必要なのもケーキのためなのね?」
「さすがナミさん!」
ナミはひとつため息をついたが、やがて唇に笑みを浮かべた。
「ちょうど良かった。あのね、わたしたちもサンジ君にケーキをつくって欲しかったのよ。ほら、チョッパーの誕生日!サンジ君もルフィも忘れてるでしょ〜」
「そうか、チョッパーの誕生日かぁ〜!で、それはいつだ〜?」
「今日よ、今日!本人もすっかり忘れてるみたいだから、びっくりさせたくてね。だからみんなの前では言えなかったのよ。サンジ君、予算を認めるから、パー ティ準備、任せたわよ!わたしとロビンはチョッパーとウソップをさがして、なんとか足止めしておくから」
「うほ〜〜〜!これでちゃんと誕生日のケーキになるな〜」
「お任せください!早速買い出しに行って来ます!ほら、行くぞ、ルフィ!」
サンジはナミから財布を受け取り、
リンの顔を見た。
「そういうわけだから、
リンちゃん、今日は手伝いをよろしく頼むぜ」
リンはサンジの瞳に浮かぶあたたかな光を見た。『ケーキ』と聞いたときの心の揺れが伝わってしまっただろうか。しばらくまえ にサンジのケーキを食べたとき・・・・あの時から
リンはサンジの勘のよさを恐れていた。
「大丈夫。今日のケーキは
リンちゃんの手を借りてすごいやつにするからさ。あの剣豪野郎も絶対食いたくなるような!」
「こりゃ〜楽しみだな〜。な、
リン!」
サンジとルフィの笑顔はまるで少年のようだった。この笑顔には誰も逆らえない・・・と
リンは思った。
「じゃ、頼んだわよ〜」
ナミとロビンと別れ、3人はそのままいくつもの店をのぞいた。ルフィの手の中の荷物はどんどん増え、それでもサンジは真剣に目当ての店を探していた。
「お〜!あった、あった!」
サンジは1軒の店の前で立ち止まった。
(果物屋・・・・・・?)
雪が降る真冬。窓から見える店内は所狭しと色鮮やかなフルーツが並べられていて、そこだけ季節が全然別のもののようだ。
「
リンちゃん、ルフィ、ちょっと待っててくれ」
張り切って店に入って行ったサンジはしばらく戻ってこなかった。
「サンジ君、張り切ってるね」
「そうだな〜。なんかさ、最初はブツブツ言ってたんだよな〜。クリームはどうとかこうとか・・・・でも、なんだか急に盛り上がったんだ、あいつ」
(やっぱり・・・・・・)
リンは思わず店の中のサンジの姿を探した。
「荷物がなかったら、雪ダルさん作れるのにな、
リン」
「チョッパーの島では最後に作る暇がなかったものね」
「な〜!」
メリー号に乗るまで、
リンは雪ダルマを作ったことがなかった。
雪合戦も実は今日が初めてだった。
最初は戸惑ったし子供っぽい気がして遠慮もあったが、いつのまにか夢中になっていた。
(ルフィはいつもそうだ・・・・・)
ルフィは時々ウソップやチョッパーを誘ってふざける時に、
リンにも声をかけたり今日のように強引に巻き込んだりする。
リンは実はそれがとても嬉しかった。
「雪っていいよな〜」
二人は並んで雪落ちる空をながめた。
「お待たせ、
リンちゃん!」
店から出てきたサンジはとてつもなく大きな袋を抱えていた。
「しっかし冬だしクリスマス価格とやらで高かったな〜」
サンジは片手で器用に煙草に火をつけた。
「なあ、サンジ、その袋の中、ぜ〜んぶ果物か?」
「おう!期待してろよ。さ、船に戻ろうぜ!」
先に立って歩き出したサンジの足取りは軽く、スキップしそうに見える。それにつられるようにルフィと
リンも道を急いだ。
雪がやわらかく積もり始めていた。