「そんな〜!たった1センチ、オーバーしただけじゃない!」
気性に似合った明るい色の髪の航海士が叫んだ。
「申し訳ないけどね、お客さん、規則は規則。ここで例外なんか認めたら、歯止めがきかないってもんだ。わかるだろ?」
「あのね、大丈夫だから。先に船に戻ってるから」
騒ぎが大きくならないうちにと少女は急いでその場を離れた。
大急ぎで衣類を身につけて外に飛び出すと、見慣れた広い背中にぶつかりそうになった。
「あ」
「お」
二 人は同時に口を開いた。
「やっぱり、お前もか?」
「うん・・・・傷の長さが31センチだったから1センチ分オーバーだって・・・・・」
「・・・俺は一目瞭然ってやつだったが、お前のは・・・しっかり計ったのか・・・・」
「うん。ポケットに専用のメジャーを持ってた」
二人は脱力感でいっぱいな笑みを交わした。
「刀を持ってはいるのもダメだって言われた?」
「いや、だから、俺はそこまでいかねぇうちに・・・。そうか、そんな規則もあったのか」
「ナミが怒ってた。効用に切り傷が入ってるのにどういうことなのって」
今度はため息を交わす二人。
けれど、段々と事のおかしさの方が勝ってきて。
唇の端から本物の笑みがこぼれた。
「ま、温泉街だ。湯はここだけじゃないしな。他をあたるか」
「うん」
腰に3本と背中に1本。
二人の後ろ姿は、通りに繰り出した浴衣姿の客たちの中に消えていった。