拍手SS

 「そんな〜!たった1センチ、オーバーしただけじゃない!」

 気性に似合った明るい色の髪の航海士が叫んだ。

「申し訳ないけどね、お客さん、規則は規則。ここで例外なんか認めたら、歯止めがきかないってもんだ。わかるだろ?」

「あのね、大丈夫だから。先に船に戻ってるから」

 騒ぎが大きくならないうちにと少女は急いでその場を離れた。
 大急ぎで衣類を身につけて外に飛び出すと、見慣れた広い背中にぶつかりそうになった。

「あ」
「お」

二 人は同時に口を開いた。

「やっぱり、お前もか?」

「うん・・・・傷の長さが31センチだったから1センチ分オーバーだって・・・・・」

「・・・俺は一目瞭然ってやつだったが、お前のは・・・しっかり計ったのか・・・・」

「うん。ポケットに専用のメジャーを持ってた」

 二人は脱力感でいっぱいな笑みを交わした。

「刀を持ってはいるのもダメだって言われた?」

「いや、だから、俺はそこまでいかねぇうちに・・・。そうか、そんな規則もあったのか」

「ナミが怒ってた。効用に切り傷が入ってるのにどういうことなのって」

 今度はため息を交わす二人。
 けれど、段々と事のおかしさの方が勝ってきて。
 唇の端から本物の笑みがこぼれた。

「ま、温泉街だ。湯はここだけじゃないしな。他をあたるか」

「うん」

 腰に3本と背中に1本。
 二人の後ろ姿は、通りに繰り出した浴衣姿の客たちの中に消えていった。

2005.5.26

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